この記事は「#AGAのウソホント」シリーズの第5回です。 よくある薄毛の疑問を、診療ガイドラインや研究、公的機関の情報を参考に、できるだけわかりやすく解説しています。
※本記事は、公的な診療ガイドラインおよび公表されている研究を参照して執筆しています。参考文献・参考情報は最後にまとめて掲載しています。
「白髪を抜くと増える」と聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。実際には本当なのか気になって検索した、という方も少なくないはずです。
この記事では、噂の真相と、白髪を見つけたときの正しい対処法をわかりやすく解説します。
この記事では、次のことがわかります。
- 白髪を抜くと本当に増えるのか
- そもそも白髪はなぜ生えるのか
- 白髪を抜き続けることのデメリット
- 白髪を見つけたときの正しい対処法
- 白髪とAGA・薄毛の関係
白髪を抜くと増えるって本当?【結論】

先に結論をお伝えします。白髪を1本抜いたことがきっかけで、白髪の本数そのものが増えるという科学的根拠は、現時点では確認されていません。
白髪を1本抜いたことで増えるという根拠はない
髪の毛は1つの毛穴(毛包)から1本ずつ生えており、それぞれの毛包は独立して働いています。1本の白髪を抜く行為が、隣にある別の毛包の色素産生に影響を与えるという医学的な仕組みは確認されておらず、周囲の毛まで白髪に変わることはないとされています。
「白髪を抜いたら、その後すぐに何本も白髪が増えた気がする」という体験談はよく聞かれますが、これは抜いたことと白髪が増えたことのタイミングがたまたま重なった、偶然による誤解であることが多いと考えられます。
「増えた」と感じる理由
科学的な根拠がないにもかかわらず、多くの人が「抜いたら増えた」と感じてしまうのには、いくつかの理由があります。
まず、白髪が目立ち始める年代は、もともと他の毛髪も同時に白髪化が進みやすい時期と重なります。1本を抜いている間にも、他の毛包では加齢に伴う変化が同時進行しているため、「抜いた後に増えた」ように見えるだけで、実際には抜いたこととは無関係に進行していた可能性が高いのです。
また、一度白髪が気になり始めると、以前よりも鏡で頭髪をチェックする頻度が増え、これまで気付いていなかった白髪にも次々と目が向くようになります。これは「気になるものほど目につきやすくなる」という認知バイアスの一種で、実際の本数が急増したというより、気付く数が増えたことで「増えた」と感じている側面も大きいと考えられます。
そもそも白髪はなぜ生えるのか

「抜くと増えるわけではない」とわかったところで、そもそも白髪はどのような仕組みで生えてくるのでしょうか。ここでは白髪の基本的なメカニズムを解説します。
メラノサイトの働きが低下することで起こる
髪の色は、毛包の中にあるメラノサイトという細胞が作り出すメラニン色素によって決まります。
日本人研究者を中心とした研究では、毛包の幹細胞が、メラノサイトのもとになる色素幹細胞を維持するための環境(ニッチ)を提供していることが明らかにされており、この環境を保つ働きが弱まると、色素幹細胞そのものが失われ、髪に色をつけられなくなることがわかっています。
メラノサイトの働きが完全に止まると、その毛包から生えてくる髪は色素のない白髪になります。
加齢による自然な変化
年齢を重ねるにつれて、メラノサイトや色素幹細胞を維持する仕組みは徐々に働きにくくなっていきます。
これは多くの人に共通して起こる自然な老化現象であり、特別な病気や異常があるわけではありません。
何歳から白髪が増え始めるかには個人差がありますが、加齢とともに白髪が増えていくこと自体は、誰にでも起こり得る自然な変化です。
遺伝的な要因
白髪が始まる年齢や進行のスピードには、遺伝的な要因も関わっていると考えられています。
両親や祖父母が若いうちから白髪が多かった場合、自分も比較的早い時期から白髪が目立ち始める傾向があるとされています。
生活習慣による影響(睡眠・ストレス・栄養バランス)
白髪の主な原因は加齢や遺伝ですが、日々の生活習慣が間接的に影響する可能性も指摘されています。
例えば、強いストレスと白髪の関係については、マウスを用いた研究で興味深いメカニズムが報告されています。ストレスによって交感神経が活性化すると、神経伝達物質が色素幹細胞を急激に分裂させ、その結果、色素幹細胞そのものが枯渇してしまい、白髪化が進むことが示されました。これはマウスでの研究であり、人間にそのまま当てはまるとは言い切れませんが、「ストレスが白髪に無関係とは言い切れない」ことを示す一つの手がかりにはなります。
このほか、睡眠不足や栄養バランスの偏りも、体全体のコンディションに影響を与える要因として知られています。「白髪が急に増えてきた」と感じる場合、これらの生活習慣を改善すれば必ず白髪が減るとまでは言えませんが、生活習慣を見直すきっかけの一つとして捉えてみるとよいでしょう。
白髪を抜き続けるデメリット

「抜いても増えるわけではない」とはいえ、白髪を抜くことがまったく問題ないというわけでもありません。ここでは、抜くことによって考えられるデメリットを紹介します。
毛根に負担がかかる可能性がある
毛を無理に引き抜くと、毛根の周辺に細かい傷や炎症が起こることがあります。同じ場所で繰り返し抜くことを続けると、その都度毛包に物理的な刺激が加わり続けることになります。また、毛を抜いた際にできる小さな傷口から雑菌が入り込み、毛包炎と呼ばれる炎症を起こすこともあるとされています。
毛が生えにくくなることもある
毛根への刺激や炎症が長期間・繰り返し続くと、毛包の周辺に瘢痕のような組織ができてしまい、その毛包から髪が生えにくくなる可能性があるとされています。一度傷んだ毛包は元の状態に戻りにくいこともあるため、「白髪だから」と気軽に繰り返し抜くことは、あまりおすすめできる方法ではありません。
白髪を見つけたときの正しい対処法

抜くこと以外に、白髪が気になったときにおすすめできる対処法を紹介します。
根元から短くカットする
白髪が数本程度であれば、根元近くでハサミを使って短くカットする方法があります。抜くのと違って毛包を傷める心配がなく、次に髪が伸びてくるのを待つだけで済むため、気になる白髪への対処法としてまずおすすめできる方法です。
白髪染め・カラーを活用する
白髪の本数が増えてきて、カットだけでは対応しきれなくなってきた場合は、白髪染めやヘアカラーを活用する方法があります。ドラッグストアなどで手に入る市販の白髪染めを使う方法や、美容室でプロにカラーリングをお願いする方法があり、仕上がりの自然さやメンテナンスの手間に応じて選ぶとよいでしょう。
また、全体を染めるのではなく、白髪の部分だけを目立たなくする「白髪ぼかし」というメッシュ状のカラーリング技術を選ぶ方法もあります。白髪の量がまだ少ない段階では、こうした部分的なアプローチも検討する価値があります。
白髪とAGA・薄毛は関係ある?

白髪が気になり始めると、「これはAGA(男性型脱毛症)の前兆なのでは」と不安になる方もいるかもしれません。ここで、白髪と薄毛の関係について整理しておきます。
白髪と薄毛は別の仕組み
白髪は、髪に色をつけるメラノサイトという色素細胞の働きが低下することで起こる現象です。一方、AGAは男性ホルモン(DHT)の影響や遺伝的要因によって、髪の成長期が短縮されていくことで進行する脱毛症であり、原因となる仕組みがまったく異なります。
なお、毛包の老化という大きな枠組みで見ると、白髪と抜け毛のいずれにも毛包の幹細胞の状態が関わっているとする研究もあり、「まったくの無関係」と言い切れるわけではありません。ただし、AGAの主な原因である男性ホルモンの働きと、白髪の主な原因であるメラノサイトの機能低下は、別の仕組みとして理解しておく必要があります。
「白髪が増えてきたから薄毛にもなる」「薄毛だから白髪も増える」と直接的に結びつけるのは、正確な理解とは言えません。
白髪が気になる場合と、生え際の後退や頭頂部の変化といった薄毛のサインが気になる場合とでは、それぞれ別の対処法を考える必要があるということを覚えておきましょう。
よくある質問(FAQ)
まとめ
この記事のポイントを整理します。
- 白髪を抜くと増えるという科学的な根拠はない
- 「増えた」と感じるのは、年代の重なりや認知バイアスによる部分が大きい
- ただし、繰り返し抜くことは毛根への負担になる可能性がある
- 気になる場合は、抜くより切る・染めるなどの方法がおすすめ
- 白髪はメラノサイトの働き、AGAは男性ホルモン・遺伝が関係しており、それぞれ別の問題として適切に対処することが大切
「#AGAのウソホント」シリーズでは、このほかにも身近な薄毛の噂について解説しています。あわせてご覧ください。
👨💼 40代サラリーマンのAGA治療体験記ブログまとめ
私のAGA治療の全記録は以下のブログでまとめています。これから治療を始める方はぜひ順に読んで参考にしてください。
参考文献・参考情報
- American Academy of Dermatology / Cleveland Clinic 監修の解説記事(毛包の独立性と抜毛の影響について)
- Mayo Clinic「Folliculitis」
- Tanimura, S., Tadokoro, Y., Inomata, K., et al., Nishimura, E. K. (2011). Hair Follicle Stem Cells Provide a Functional Niche for Melanocyte Stem Cells. Cell Stem Cell, 8(2), 177–187.
- Zhang, B., Ma, S., Rachmin, I., et al., Hsu, Y-C. (2020). Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocyte stem cells. Nature, 577, 676–681.
- 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
※本記事は上記の公的ガイドラインおよび公表されている研究・情報をもとに執筆しています。個別の症状や治療については、必ず医療機関にご相談ください。

